DIGITALIFT代表・百本正博。チートを嫌う、ある経営者の経営史

日本には、およそ420万もの会社が存在するそうだ。
海を渡り、世界各国で働くのも珍しくなくなったことを考えれば、働く選択肢は無数に存在するということになる。100人100通りの価値観が存在するため、自分にぴったりの会社で働くのは難しい。この記事を読んでいるあなたは、いったいどのような基準で働く会社を選んでいるだろうか。

デジタル領域に特化したマーケティングカンパニー・DIGITALIFTの百本正博は、会社を経営する“本音”を「働いている人を幸せにするため」だと語る。百本は、株式会社に与えられた「利潤の追求」という存在意義と、経営者として実現したい「社員を幸せにする」という本音の二つを、どのようにして実現しているのだろうか——。

来年で創業から10年を迎えるDIGITALIFTの歴史と、次の10年にかける思いを、建前なしのインタビューでひも解いていく。

ああ、なんと奥深い広告の世界

「なんて興味深く、奥が深い仕事なんだろう」。
——百本は、広告の醍醐味を「メッセージを届けて、人の行動を喚起すること」だと語る。

百本と広告の出会いは、新卒入社した大手広告代理店。アメフトに明け暮れた学生時代を終え、先々の人生について思いを巡らせたところ、広告営業の仕事に興味を持った。

「当時は職業に対する十分な理解はありませんでしたが、無形の商材を売ること、そしてコミュニケーションを仕事にすることに魅力を感じたんです。就職活動には苦労しましたが、なんとか内定をいただき、晴れて広告業界に進むことができました」。
最初の顧客は、全国各地に小売店を持つ大手流通会社。お母さんと手をつないだ小さな子どもから、杖をついたおばあちゃんまで。自分が手がけた広告がきっかけで、老若男女問わず笑顔で来店してくれるのがうれしかった。
「いざ入社してみると、求められる成果が大きかった分、苦労も少なくない環境でした。でも、自分の選択に後悔は一つもありません。当時の経験はビジネスパーソンの基礎になっていますし、なにより広告という仕事の奥深さを知ることができました」。
将来に独立を選択肢の一つに意識しての入社だったが、それでも10年勤務したのは、誰が見ても「百本は一人前だ」と思われる状態を目指したから。当時の百本の考えは「入社して数年間は、会社に損をさせている状態」。育ててもらった恩を返し切ってから、次のステージに進もうと決めていた。
「親が会社を経営をしていたこともあり、自分もいずれは経営者になるつもりでした。力をつけて一人前になったら、その恩を返すためにも、ビッグな案件を決めてやろうと。辞めるタイミングを探していたわけではありませんが、毎日の仕事に全力投球しながら、独立のタイミングを告げるシグナルが光るのを待っていたんです」。
入社からの10年間、アカウントエグゼクティブとしてメガバンクや大手通信会社、自動車メーカーを顧客に抱え、戦略からアクションまで総合的なマーケティングの知見を培ってきた。そして、来たる10年目。数億円の利益をもたらす大規模案件を見事に勝ち取り、プロジェクトを大成功のうちに終わらせた。仲間たちから背中を押され、ついに独立の道へと進む覚悟を決める。

華やかさは追わない、成果に向き合う

大手広告代理店を退職し、独立して最初の仕事は、大手インターネット広告会社でのコンサルティング。自身で事業も手がけながら、ブランド戦略や新規サービス開発、営業のコーチングに従事した。DIGITALIFTの前身となる電子広告社を創業したのは、当時はまだ「ネット広告業界のブランド理解が総合代理店に劣っている」と感じたのがきっかけだ。デジタルマーケティングの重要性が高まっていくのは「疑いようのない未来」だと確信したことから、総合代理店の経験とデジタルマーケティングの知見をかけあわせ、マーケティングの新時代を牽引する会社をつくろうと思い立った。
「独立後、マーケティング以外のドメインで事業を展開していた時期もありました。ただ、業界を離れたことで、『メッセージを届けて、人の行動を喚起すること』の喜びをひしひしと感じていたんです。そのタイミングがマーケティングの転換期と重なり、『挑戦するなら今だろう』と。電子広告社を立ち上げたのは、『自分はこの業界で生きていくんだ』という決意の表れでもありました」。
社員も顧客もいない状態で独立したため、文字通り「ゼロからのスタート」だ。
1日100件以上の電話をかけ、提案や運用、レポートの作成まで、発生する業務の全てを一人で担当していた。日々新たに100の課題が浮上し、100の即断を迫られる、ハードな毎日だった。それでもずっとスモールチームで会社を経営してきたのは、ーつでも見切り発車をしたり、判断を誤ったりすれば、いずれ苦しい局面を迎えることが想像できたからだ。安易にスケールを目指すのではなく、常に顧客を見ながら、愚直に成果に向き合うことだけに集中してきた。
「例えば『対応できる媒体の幅が広い』など、弊社の強みを挙げることはできます。とはいえ、何が他社と明確に違うのかといえば、『普通なら面倒でショートカットする部分にも、愚直に向き合うこと』だと思っています。主たる事業は広告運用ですが、運用に至る前段階、つまり戦略の設計からコミットしているんです。パートナーとして事業を伸ばすことに本気でやってきたので、その泥臭さと当事者意識には絶対的な自信があります。もちろん、その結果生み出される成果にも、です」。
およそ10年かけて揺るぎない基盤をつくってきた百本は、これから組織を飛躍させるフェーズへと進んでいく。いうなれば、会社としての提供価値をより大きく、より広くするための挑戦だ。

社員の幸福こそ、事業成長のエンジン

「ルールで個人を縛らず、それぞれが自分の役割を認識し、自分なりの方法論でパフォーマンスを発揮する」。
——そんな自律型の組織こそが、百本が理想とするDIGITALIFTの在り方だという。

組織開発において、よく「一枚岩で結束する組織が強い」ということが言われる。しかし百本は、その定説に少しだけ違和感を抱いている。異なるカラーを持った社員それぞれの個性が思う存分発揮されてこそ、組織は本当の意味で強くなると信じているからだ。

「人間は生まれたその時点で100人100通りの人生があり、それぞれが人生の主役です。であれば、会社のために個性を殺したり、思想の共有を強制したりする必要はないはず。『クライアントの事業を成長させる』とか、『ズルをせず真摯に仕事に打ち込む』とか、当然のルールさえ守れば、あとは自分の色を出していけばいい。そうした認識を全員が持てれば、どんな危機にも耐えうる強い組織になれると思うんです」。
社名変更に伴い刷新したコーポレートロゴには、「飛躍」や「前進」の意味が込められた鳥のモチーフを使用した。青と緑をベースに複数の色を用いた背景には、「さまざまな考え方を尊重し、それが重なり合うことで組織が成長していく」という百本の信念が反映されている。

会社の成長を左右する経営方針の根幹には、「社員全員が自律し、そして幸せに生きられるために、DIGITALIFTは存在する」という考え方がある。一つ例を挙げれば、人間の三大苦悩の解決。

「人間の悩みは、人間関係とお金、あとはスキルセットの大きく3つに分けられる」というのが百本の考えで、「このうち3つを満たしていれば安定的かつ幸せに生きられ、逆に1つしか満たされていなければ不安定になる」と語る。

では、社員の幸福のために、DIGITALIFTが与えられることは何か。
——百本には、持論がある。

「まずは、スキルセットの提供・育成だと思っています。10年かけて培ってきたノウハウを共有することで、“クライアントの課題を突き止めて解決できるビジネスパーソン”になるためのサポートをします。そして、出した成果はしっかり給与に反映します。そのサイクルをとめどなく回していけば、会社にとっても、社員にとっても幸福な循環がつくれるでしょう。この時点で、スキルセットとお金の2つの悩みを解決できます。人間関係に関しては、社外のこともあるのでコントロールが難しい問題です。でも、一緒に働く仲間は信頼できる関係性でい続けられるよう、採用の時点で厳しくスクリーニングをしています。結局のところ、なんのために会社を経営しているのかを問われれば、もちろん株主のことも考えていますが、社員のためということになりますね」。
独自の経営哲学は、社員の幸福にコミットすることこそが、利潤追求における最も強力なエンジンになることを理解しているからこそのスタイルだ。

早く行きたければ、一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め

創業から現在までを振り返れば、昨今のスタートアップのように「華やか」と表現するような成長はしてこなかったかもしれない。しかし、顧客の信頼を勝ち取り、社員が増え、より大きな未来を描けるようになったのは紛れもない事実だ。これからは、どのような景色を目指して走っていくのだろうか?

10年後のDIGITALIFTについて尋ねると、百本は「10年経っても、変わらず社員の幸せのために会社を経営していると思いますよ」と表情を緩める。

「仕事は人生の大半の時間を占める要素ですし、そこで得た経験や給与は家族を養うための原資です。だから、僕、社員が増えることが本当にうれしいんです。重要度の高いパーツに、DIGITALIFTを選んでくれているわけですから。でも、社員とその家族の連続的な生活を預かっていることに、大きな責任を感じます。提供してくれた資産に、しっかり付加価値をつけてお返ししないといけない。それは、経営者として果たすべき義務だと思っています」。
そのうえで、「目的は変わりませんが、やることは変わると思います」とも付け加える。

百本の口癖は、「運用屋さんになるな」。ただ手を動かすだけの仕事をせず、マーケティングの本質を見るよう口すっぱく言い続けてきた。DIGITALIFTにおける広告運用の位置付けは、顧客の動向を効率的かつ安定的に収集できるポジション。ノウハウがあれば成果を出しやすい事業でもあるので、ここから離れることはない。

ただ、目指すゴールは「広告運用のプロフェッショナル」ではないのも事実。現在も「CdMO(=デジタル領域に精通したマーケティングのプロ)」を標榜しているように、常にマーケティングプロセス全体を俯瞰し、顧客の経営課題を共に解決するパートナーとして事業に取り組んできた。

「DIGITALIFTは、総合代理店出身の私がデジタル領域の専門家として立ち上げた、デジタルと非デジタルをつなぐ役割を担う会社です。コアコンピタンスは常にマーケティングにあります。でも、マーケティング以外の事業に進出していく可能性も十分にあります。数字を目標にしてるわけではありませんが、100億、200億と売り上げを伸ばしていくつもりです。社員たちと、まだ見たことのない景色が見たいですから」
百本が理想に掲げるのは、働く社員全員が幸福を感じながら、顧客の求める価値を提供し続ける組織の実現。「次の10年が勝負です」と襟を正すも、彼の言葉を聞く限り、すでにその土台は完成しているようにも思える。ただ、次の10年をかけて、より高次な次元での目標達成に進んでいくのは間違いない。これからの10年を一緒につくっていくのは、いったいどのよう仲間たちなのだろうか。

“If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.”
早く行きたければ、一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め。そんな言葉も、思い出される。

社員インタビュー一覧

  • Webエキスパート朝長 広樹

  • AE小川 寛大

  • AE中里 拓也

  • AE Div チームリーダー佐々木 崇典

  • 宮崎支社責任者野津手 俊幸

  • Webエキスパート/AE朝長広樹/原田優希

  • Director / Designer安田 早智子

  • AE Div マネージャー青島 知彦

  • 取締役・AE Div統括鹿熊 亮甫

  • 代表取締役百本 正博